一時所得とは

一時所得とは

「所得」には、給与所得や事業所得、山林所得など10種類の区分に分けられていてそれぞれ税額の計算が異なります。
この10種類の所得のうちのひとつが「一時所得」です。

一時所得とは、懸賞、クイズの商品、競馬の馬券の払戻金、生命保険の満期保険などのことで、以下の要件を満たす所得のことをいいます。

①一時的な所得であること
②働いたことによって得た所得ではないこと
③資産の売却によって得た所得ではないこと
④営利を目的とする継続的な行為から生じたものではないこと

一時所得となるもの

一時所得に該当する具体的なものは以下のとおりです。

①懸賞、クイズの賞金や商品
ただし、個人事業者が業務を通じて得た所得については、一時所得ではなく「事業所得」になります。②法人から贈与された金品
金品を贈与された場合には通常贈与税が課されますが、この場合には贈与税ではなく、所得税が課税されることになります。

③競馬の馬券、競輪の車券の払戻金
馬主が競走馬を保有することによって得た所得は、一時所得ではなく「事業所得」または「雑所得」となります。

④生命保険の満期保険金
年金形式で受け取るものは、「雑所得」となります。

⑤長期損害保険の満期返戻金

⑥遺失物を拾った人がお礼としてもらう謝礼金

⑦借家人が立ち退きにあった時にもらう立退料
ただし、商売を行っている借家人が立ち退きによって売上補填などの名目でもらう所得については、一時所得ではなく「事業所得」となります。

※ただし、競馬や競輪などで得た利益が、「一時所得」ではなく「雑所得」と認められる判例が、2017年に下されました。この判例では、競馬の馬券の払戻金で、営利を目的とする継続的な行為から生じたものについては一時所得ではなく「雑所得」となります。
つまり、たまに楽しむ程度の競馬の払戻金は「一時所得」に該当しますが、馬券の購入を事業として行っている場合には、「雑所得」となります。

一時所得の計算方法

一時所得は、総収入額から収入を得るために支出した金額、特別控除額(最高限度50万円)を差し引いた残額です。

総収入額-収入を得るために支出した金額-特別控除額(最高50万円)=一時所得の金額

収入を得るために支出した金額とは

収入を得るために支出した金額とは、「その収入を生じた行為をするために、又はその収入を生じた原因の発生に伴い、直接要した金額に限る」と考えられています。

例えば、3レースに5万円ずつ均等に馬券を買い、予想が的中したのは1レースでした。このときに支出した総額は15万円ですが、払戻金を得られたのは1レースなので、「その収入を得るために支出した金額」は5万円となります。

また、生命保険契約や損害保険契約に基づく満期保険金を受け取った場合には、それまで支払った保険料や掛金が該当します。

特別控除額とは

特別控除額は最高限度額が50万円です。ただし、この特別控除額があるのは一時所得が生じた取引ごとではなく、一時所得全体に対するものと考えられています。

生命保険契約に基づく一時金を例にみてみましょう。

複数の生命保険会社で資産運用していたとして、A保険の一時受取金では300万円の利益が、中途解約したB保険では解約返戻金などもあって50万円の損失が生じたとします。
このときは、300万円の利益から50万円の損失を差し引き、さらに50万円を限度として特別控除額を差し引けるので、結果として一時所得は200万円となります。

税額の計算方法

総合課税(各種の所得を合算した額に課税する制度)」方式をとる一時所得では、上記で述べた所得金額の1/2に当たる金額を給与所得などの他の所得と合算し、所得控除額を差し引いて納税額を計算します。一般的な給与や年金の所得と同じですが、課税対象が1/2になるので、納税者に有利な制度といえます。

例えば、さきほどの生命保険の一時金の事例を参考にすると、一時所得とみなされる金額は200万円ですから、その半分である100万円が課税対象となります。

このように、一時所得はさまざまな種類があり、総収入や所得税の計算方法には十分な注意が必要です。特に生命保険や損害保険の一時金が複数ある場合は、総収入の計算が複雑です。国税庁のホームページを確認したり、税務署に相談したりして、確定申告の手続きを行いましょう。

一時所得は他の所得と損益通算できない

損益通算とは、一定期間内の利益と損失を相殺することをいいます。
たとえば、株取引を行っていて赤字が出てしまった場合には、黒字の所得からその赤字分を差し引くことができます。
このように損益通算できる所得は、不動産所得、事業所得、譲渡所得、山林所得の4つに限られています。したがって、一時所得で赤字が出ても、一時所得の内部では損益通算はできますが、他の所得から赤字分を差し引くことはできません。

一時所得で損失が出た場合

最近は、低金利で運用されることも多いことから「払い込んだ保険料より受け取った保険金の方が少なかった」というケースも多くなっています。
このような場合には、「満期保険金-支払った保険料の総額=マイナス」で所得がゼロということになりますので、確定申告をする必要はありません。
なお、前述したとおり一時所得は赤字が出ても他の所得と損益通算はできません。

したがって、保険金で損失が出ても一時所得の内部で損益通算はできますが、給与所得や事業所得などの他の所得と損益通算することはできません。

生命保険が満期後継続する場合

保険金が満期になってそのまま継続して再契約することがあります。
この時、保険金を受け取らないので確定申告をすることを忘れてしまう人がいますが、たとえ保険金を現金で受け取らなくても保険の満期があったという事実は変わりません。
保険金を現金で受け取らずに新しい保険契約にそのまま充当した場合でも、保険会社からは支払調書が送られてくるはずなので、確定申告を忘れないようにしましょう。

生命保険にかかる税金についての注意点

満期保険の場合でも、保険の契約者と受取人が異なる場合には、所得税ではなく贈与税、相続税が課される場合があります。

たとえば、夫が保険料を支払い、その満期保険料を妻が受け取ったケースでは贈与税の対象となりますし、夫が契約者かつ被保険者で死亡保険料を妻が受け取ったケースでは相続税の対象となります。

保険の契約者と受取人が異なる場合には、どの税金が課されるのか注意が必要です。

まとめ

これまでご紹介したように、競馬の馬券の返戻金や満期の保険金などは一時所得となり、所得税が課されますが、50万円の特別控除と2分の1課税のメリットがあります。
また、保険の契約者と受取人が異なる場合には、所得税ではなく贈与税や相続税などの対象となることがあります。
計算方法や課税される税金の種類が分からない場合には、税理士に相談してサポートを受けることをおすすめします。

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